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映画『Demon City 鬼ゴロシ』レビュー・感想・評価|なぜ単調に感じたのか、「セリフ24個」の設計を考える(★2)

映画Demon City 鬼ゴロシのイメージ。赤いネオンの夜の路地で、斧を提げて立つ男のシルエット 邦画レビュー
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Netflixで配信中の『Demon City 鬼ゴロシ』(2025)を観ました。

生田斗真主演、マサカリ1本で復讐に挑むバイオレンスアクション。予告編の血しぶきと布袋寅泰の音楽に惹かれて再生しました。

ただ、正直に書きます。期待していたものとは、かなり違いました。

※本記事には作品の重要なシーンや結末に関する記述が含まれます。未視聴の方はご注意ください。前半はネタバレなしで書いています。

■作品概要

2025年2月27日からNetflixで世界独占配信。日本のNetflix週間TOP10で1位を記録した話題作です。

原作は河部真道さんの漫画『鬼ゴロシ』(週刊漫画ゴラク・全16巻)。監督・脚本は『メランコリック』の田中征爾さん。音楽は布袋寅泰さんが担当しています。

主演は生田斗真さん。共演に尾上松也さん、東出昌大さん、髙嶋政伸さん、田中美央さん、當真あみさん、竹中直人さんなど。

キャッチコピーは「セリフ、24個。殺したやつ、100人超え。」。この一文が、作品の方向性をよく表しています。

■あらすじ

裏社会を震撼させてきた伝説の殺し屋・坂田周平。妻と娘との平穏な暮らしのため、殺し屋稼業からの引退を決意します。

しかしある日、地方都市・新条市を裏で牛耳る謎の組織「奇面組」に、愛する家族を殺されてしまう。坂田自身も重傷を負い、あろうことか妻子殺しの犯人に仕立て上げられます。

長い年月を経て、再び奇面組に襲われたことをきっかけに、坂田の殺しの本能が呼び覚まされる——。

■良かったところは、ちゃんとある

先に、良かった点を書いておきます。

まず、俳優陣の存在感です。生田斗真さんはもちろん、東出昌大さんが演じる伏勘太をはじめ、奇面組の面々はそれぞれ癖があり、演技には見応えがありました。

映像も全体的に暗く、血しぶきや人体の損傷を見せる場面もあり、日本映画としては比較的容赦のないバイオレンス描写になっています。この振り切り方は評価できます。

人を次々と倒していく迫力もあります。マサカリを使った戦闘や、血が大量に飛び散る場面には、それなりの見応えがありました。

■伝説の殺し屋、のはずが

ただ、ここからが正直な感想です。

坂田は「裏社会を震撼させた伝説の殺し屋」とされています。でも、自分が想像していた殺し屋とは、だいぶ違いました。

標的に気づかれずに近づいて仕留める。周到に罠を仕掛ける。狙撃や潜入技術を使う。そういう技巧派ではありません。

とにかく正面から乗り込んで、撃たれても斬られても倒れずに、敵をなぎ倒していく。「最強の殺し屋」というより、圧倒的な耐久力を持つ不死身の戦士に近い。かなりゴリ押しの戦い方に見えました。

それが作品の狙いなのかもしれません。「鬼」というタイトルには合っています。

ただ、伝説の殺し屋ならではの技術や頭脳を使ったアクションを期待していた自分には、正直、物足りなかったです。

■戦い方に変化がないので、途中から単調に

アクションが単調に感じた理由も、そこにあります。

戦い方の変化や工夫が少なく、正面から敵の集団へ突っ込み、力と耐久力で押し切る展開が多い。だから、途中から「またこれか」と感じてしまいました。

もうひとつ引っかかったのが、リアリティです。

坂田は頭を撃たれて、長期間ほとんど動けない状態になっていました。にもかかわらず、復活してからは銃撃や爆発、激しい負傷にも耐えながら戦い続けます。

漫画が原作なので、現実離れした表現自体は理解できます。ただ、なぜここまで動けるのかという説得力があまりなく、リアリティはかなり低いと感じました。

■ここから【ネタバレあり】です

※以下、物語の重要な展開と結末に触れます。未視聴の方はご注意ください。

■父と娘、すれ違う弓

物語の途中で、死んだと思っていた娘・りょうが生きていることが判明します。

ここから坂田には、妻・葵を殺された恨みだけでなく、娘を奇面組から取り戻すという新たな目的が加わります。

ところが、りょうは家族を襲った奇面組の一人・伏勘太に、そのまま育てられていました。長い年月が経ち、幼い頃の記憶はほとんど残っていません。伏を父親だと思って生活しています。

だから坂田がようやく見つけても、りょうは彼を父親だと認識できない。それどころか、最初の再会では、見知らぬ危険人物だと思った坂田に向かって弓を放ち、彼を窓から転落させてしまいます。

父親が命懸けで娘を捜している一方で、娘はその人物が父親だと分からず攻撃してしまう。

この構図は、本来かなり切ないはずです。親子の物語として、もっと感情的に描ける要素だったと思います。

でも、そこがあまり掘り下げられないまま、物語は次の戦闘へ進んでいってしまう。もったいないな、というのが率直な気持ちでした。

■坂田の最期

終盤、りょうは奇面組の首領・春原に命を狙われる中で、幼い頃の記憶を少しずつ取り戻します。坂田が自分を逃がそうとした過去を思い出し、目の前で戦っている男が実の父親だと気づく。

坂田はすでに致命傷を負っており、片腕を失いながらも春原を倒します。さらに襲ってきた伏勘太も、最後の力を振り絞って倒す。

ようやく父親だと思い出したりょうは、瀕死の坂田のもとへ駆け寄ります。坂田は妻の葵を守れなかったことを娘に謝り、二人は抱き合う。しかし再会を喜ぶ時間はほとんど残されておらず、坂田はりょうの腕の中で亡くなります。

この場面には、確かに多少の感動がありました。

娘に自分が父親だと思い出してもらい、最後に抱きしめることができた。その点では、坂田の物語にも一つの救いがあります。

ただ、自分としては、強く感情移入するところまではいきませんでした。

理由を考えてみると、劇中で描かれる親子の過去が、あまりに少ないからだと思います。

幼い頃のりょうと坂田が抱き合う場面は、確かにありました。でも、本当にそれくらいなんです。

坂田にとっては、失われた年月のすべてが詰まった再会のはずです。でも、観客の側には「思い出す材料」がほとんど積まれていない。感情の土台がないところに、感動的な場面だけが置かれている。

だから、りょうが記憶を取り戻して駆け寄る場面も、頭では「泣くところだ」と分かるのに、心がついていかない。そんな感覚でした。

りょうが敵の一人を父親だと思って育った葛藤も、ほとんど掘り下げられていません。ここを丁寧に描いていれば、まったく違う重さの場面になっていたはずです。

■娘が継ぐ、復讐の弓

そしてラスト。

坂田が倒したはずの首領には双子の兄弟が存在し、その生き残りが首領になりすまして街の権力を握り続けていたことが明かされます。

それから約1年後。りょうは弓矢を持ってその男を待ち伏せし、矢を放って仕留めます。

かつて父親だと分からないまま坂田を撃ってしまった弓を、今度は本当の敵を討つために使う。坂田が完全には果たせなかった復讐を娘が引き継ぎ、親子二代にわたる復讐が完結します。

この構成には、確かに工夫を感じました。単なる再会で終わるよりは意味があります。

ただ同時に、父親を取り戻した直後に亡くし、りょう自身も復讐する側へ進んでしまったとも受け取れます。

家族の復讐を終わらせた爽快な結末というより、父親と同じ暴力の世界へ娘まで踏み込んでしまった、少し後味の悪い結末にも見えました。

ここに至るまでのりょうの心情や、坂田を父親だと思い出す過程がもう少し丁寧に描かれていれば、ラストの弓矢にも、さらに重い意味を感じられたと思います。

■セリフ24個、という設計

なぜ単調に感じたのか。観終わってから調べてみて、腑に落ちたことがあります。

この映画のキャッチコピーは「セリフ、24個。殺したやつ、100人超え。」。

つまり、セリフを極限まで削ることは、意図的な選択だったということです。

だから、坂田の心情も、りょうの葛藤も、奇面組という組織の背景も、最低限しか描かれない。物語よりもアクションを前面に押し出す。それがこの作品の設計思想なんですね。

言われてみれば、確かにそうでした。

観ていて自分が受けた印象は、「復讐する → 敵を倒す → また次の敵を倒す」という流れが最後まで続いている、というものでした。それは失敗ではなく、狙い通りだったわけです。

アクション映画として割り切って観れば、楽しめるのかもしれません。

ただ、自分は復讐劇としての人間ドラマや心理描写を期待していました。だから、物語に深みを感じることができなかった。

作品が悪いというより、自分が求めていたものと、作品が届けようとしたものが、根本的にズレていた。そういうことなのだと思います。

■原作は全16巻

もうひとつ、後から知ったことがあります。

原作漫画は全16巻。それを110分弱の映画にまとめているそうです。

調べたところ、原作では巨大企業「マサカドグループ」が関わる三つ巴の構図があり、りょうが洗脳された状態で坂田と対峙するなど、映画では描かれていない要素も多いようです。物語の厚みが、そもそも大きく違う。

もちろん、映画として再構成した結果だとは思います。16巻を110分に収めるなら、削らざるを得ないでしょう。

ただ、その過程で人物の心理描写や背景説明が大きく省略されたこと。それが、自分が「単調」と感じた一番の理由なのかもしれません。

奇面組が街の政治や警察、犯罪組織にまで影響を及ぼしていること。坂田が家族殺しの犯人に仕立て上げられていたこと。物語を広げられそうな設定は、確かにあるんです。それらが十分に掘り下げられないまま、次の戦闘へ進んでしまう。

原作は未読なので断定はできません。ただ、世界観や登場人物をより深く描いているのであれば、自分には漫画のほうが合っているように感じました。

■こんな人におすすめ

  • とにかく血しぶきと殺戮アクションが観たい人
  • 頭を空っぽにして流し見したい人
  • 生田斗真さんの新境地(ほぼセリフなしの復讐鬼)を観たい人
  • 東出昌大さん・尾上松也さんらの悪役ぶりが気になる人

逆に、こんな人には合わないと思います。

  • 『ジョン・ウィック』のような技巧的なアクションを期待している人
  • 復讐劇に感情的な深さを求める人
  • バイオレンス描写が苦手な人

当サイトでは、忖度なしで★2をつけた作品もいくつかあります。よかったら『REVENGE リベンジ』のレビューもどうぞ。

■まとめ

個人的な評価は★★☆☆☆(5点満点中2点)です。

血の量や殺し方の激しさはあります。俳優陣の演技にも見応えがありました。

ただ、ストーリーもアクションも全体的に単調でした。豪華な出演者や興味深い設定を十分に活かし切れておらず、復讐劇としての感情的な深さも、殺し屋アクションとしての技術的な面白さも、自分には足りなく感じました。

坂田と娘の再会や、娘が父親の復讐を引き継ぐラストには一定の意味を感じます。でも、そこまでの感情の積み重ねが弱く、心を大きく動かされる復讐劇にはなっていなかった。それが正直な感想です。

ただ、これは「作品が下手だった」という話ではないのかもしれません。セリフを削ってアクションに振り切る、という設計は意図的なものでした。自分が求めていたものと、作品が届けようとしたものが、単にズレていた。そう考えるほうが正確な気がします。

実際、Netflixの週間ランキングで1位を獲るなど、一定の層には確実に刺さっている作品でもあります。「難しいことは考えず、ひたすら暴れる映画が観たい」という気分のときには、選択肢になるかもしれません。

Netflixで独占配信中です。気になった方は、ぜひご自身の目で確かめてみてください。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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