2023年の放送当時、毎週リアルタイムで追いかけていたドラマ『VIVANT』についてです。
普段テレビの日本ドラマはあまり観ないのですが、これだけは別でした。次に何が起こるのか分からないまま放送を待ち、見終わったあとには考察や感想を追いかける。あの独特の盛り上がりも含めて、リアルタイムで観る楽しさを強く感じさせてくれた作品です。
■第2シーズンが始まりました(2026年7月26日〜)
2026年7月26日から、TBS日曜劇場で第2シーズンの放送が始まりました。第1シーズンの最終話から直結する形で、通算第11話としてスタートしています。日曜劇場としては異例の2クール連続放送です。
私も第1話をリアルタイムで観ました。感想は『VIVANT』第2シーズン第1話の記事にまとめています(ネタバレを含みます)。
この記事は第1シーズンについてのレビューです。まだ観ていない方は、こちらから読み進めてください。
★★★★☆(5点満点中4点)
- ひとことで言うと:一つの作品の中でジャンルが変わり続ける、予測不能な大型エンターテインメント
- こんな人におすすめ:壮大なスケールの作品が好き/先の読めない展開を楽しみたい/豪華俳優陣の演技を堪能したい
- おすすめの見方:とりあえず第4話まで観てほしい
- 配信:U-NEXT・Netflix・Lemino・Amazonプライム・ビデオで見放題
※物語の核心(クライマックス)には触れずに書いています。
なお、第1シーズンの第1話は、TBS公式で無料公開されています(公開期間や内容は変更される場合があります)。まずは無料で雰囲気を確かめてみるのもおすすめです。
気になった方は、下記から視聴できます。
月額600円(税込)
※配信状況は変更される場合があります。
■作品概要
2023年7月から9月にかけて、TBS系「日曜劇場」で放送された連続ドラマです。平均視聴率は日曜劇場の中でも高い数字を記録し、放送当時は大きな話題になりました。
主演は堺雅人さん。共演に阿部寛さん、二階堂ふみさん、役所広司さんなど、映画の主役級の俳優が顔をそろえています。演出は『半沢直樹』などで知られる福澤克雄さんが中心を務めています。
2026年7月現在の配信状況は、U-NEXT・Netflix・Lemino・Amazonプライム・ビデオで見放題です。そして2026年7月26日から、待望の第2シーズンが放送開始します。
■あらすじ
物語の主人公は、大手商社に勤める乃木憂助。会社から中央アジアのバルカ共和国へ送金した金額が、本来の予定より大幅に多かったことから、乃木は誤送金された金を取り戻すために現地へ向かいます。
最初は企業の誤送金事件を追うサスペンスに見えますが、乃木は現地で爆破事件に巻き込まれ、警察から追われることになります。警視庁公安部の野崎、医師の柚木薫、少女のジャミーンたちと行動を共にしながら、広大な砂漠を越えて日本への帰還を目指す——。
序盤は、まるで一本の映画を見ているような海外逃亡劇として進んでいきます。砂漠や街中での逃走、異国の警察との攻防など、日本のテレビドラマではなかなか見られない映像が続き、第1話から作品にかけられた熱量が伝わってきました。
■まずは「とりあえず第4話まで」見てほしい
このドラマを誰かにおすすめするなら、私は必ず「とりあえず第4話までは見てほしい」と伝えたいです。
第1話から映像のスケールは大きく、逃亡劇としても十分に楽しめます。しかし第3話までの段階では、「海外ロケに力を入れた壮大な冒険ドラマ」という印象で終わってしまう人もいるかもしれません。
『VIVANT』という作品の本当の面白さが見え始めるのは、第4話です。第4話を境に、主人公・乃木憂助の見え方が大きく変わります。それまで見ていた物語の意味も変わり、序盤に感じていた小さな違和感にも、少しずつ意味があったことが分かってきます。
それまでの乃木は、誤送金事件に巻き込まれ、野崎に助けられる、少し頼りない商社マンのように見えます。ところが第4話以降は、乃木の言葉、表情、行動のすべてを疑いながら見るドラマへと変化します。
この人物は本当に味方なのか。いま話していることは真実なのか。誰が誰をだましているのか。そうした疑問が次々と生まれ、それまでとは違った緊張感で物語を見ることになります。
第4話は、単に衝撃的な展開がある回というだけではありません。それまで見ていたドラマのジャンルそのものが変わる、重要な転換点だと思います。第1話だけを見て「自分には合わないかもしれない」と判断してしまうのは、少しもったいない作品です。第4話を見る前と見たあとでは、『VIVANT』という作品に対する印象が大きく変わるはずです。
「第4話まで見てほしい」という感想は、ほかの視聴者ともよく重なります。ただ、これは誰かの意見をまねしたものではありません。私自身、2023年の本放送を追いかける中で、第4話を見たときに「このドラマはここから大きく変わる」と自分で感じたものです。多くの人が同じ回を転換点として挙げているとすれば、それだけ第4話が作品にとって重要な回だったことの表れだと思います。
■一つの作品の中で、ジャンルが変わり続ける
『VIVANT』の大きな魅力は、一つのジャンルに収まらないところです。
序盤は海外を舞台にした逃亡劇。そこから企業内部の裏切り者を探すミステリーへと変わり、公安、別班、国際テロ組織が絡む諜報戦へと発展していきます。さらに物語の後半では、主人公の過去や家族の問題が中心となり、壮大な父と息子のドラマへと変化していきます。
冒険、企業サスペンス、ミステリー、スパイ、アクション、家族ドラマ。これだけ多くの要素を一つの作品に詰め込んでいるため、展開にはかなりの勢いがあります。次の回では何が起きるのか。誰の言葉を信じればよいのか。味方だと思っていた人物が本当に味方なのか。毎週、物語の前提そのものが変わるような面白さがありました。
見る人によっては「少し詰め込みすぎ」「展開が大きく変わりすぎる」と感じるかもしれません。それでも私は、この先の読めなさこそが『VIVANT』の最大の魅力だと思います。
■堺雅人が演じる、乃木憂助の二面性
俳優陣の中でも、物語の中心となる堺雅人さんの演技は印象的でした。穏やかで気弱そうな商社マンとしての乃木。感情を抑え、冷静に物事を判断する乃木。家族を求める一人の息子としての乃木。同じ人物でありながら、場面によってまったく違う人物のように見えます。
表情や声の変化だけで、その場の乃木が何を考えているのか分からなくなる。しかし物語が進むにつれて、その異なる顔が少しずつ一人の人物としてつながっていきます。
乃木の内面に存在する「F」も含め、主人公自身が作品最大の謎になっているところが面白かったです。主人公だからといって、視聴者がすべてを知ることができるわけではありません。むしろ視聴者も、野崎たちと同じように乃木の行動を観察し、その本当の目的を考えながら物語を見ることになります。
阿部寛さんが演じる公安の野崎も、欠かせない存在です。豪快で行動力があり、多少強引なところもありながら、細かな違和感を見逃さない。乃木のことを疑いながらも、必要な場面では助ける。敵なのか味方なのか分からない人物が多い中で、野崎が登場すると不思議な安心感がありました。重厚で緊張感の強い物語の中に、ユーモアや人間味を加えているのも野崎です。互いに相手を警戒しながら、それでもどこかで信頼している。乃木と野崎の独特な関係も、作品の見どころの一つだと思います。
■特に印象に残った、黒須・ドラム・チンギス
豪華なキャストがそろっている作品ですが、私が特に印象に残ったのは、黒須、ドラム、チンギスの3人です。いずれも物語の主役ではありませんが、作品の面白さや世界観を支えるうえで欠かせない存在だったと思います。
松坂桃李さんが演じる黒須駿は、乃木と同じ別班に所属する人物です。黒須の魅力は、乃木に対する強い信頼と、任務に対する真っすぐな姿勢にあります。乃木は何を考えているのか分からない場面が多く、視聴者から見ても完全には信用できない主人公です。その乃木を信頼し、相棒として支えている黒須の存在によって、乃木という人物にも人間的なつながりが感じられました。
一方で、黒須はただ乃木に従っているだけの人物ではありません。乃木の行動に疑問を抱き、感情をぶつける場面もあります。信頼しているからこそ、裏切られたように感じたときの怒りや苦しみが大きい。その感情が伝わってくることで、黒須は単なる別班の仲間ではなく、一人の人間として印象に残りました。松坂桃李さんの抑えた演技も含めて、もっと黒須の活躍を見たいと思わせる人物です。
富栄ドラムさんが演じるドラムは、作品の中でも特に愛されるキャラクターだったと思います。ドラムは基本的に自分では話さず、スマートフォンの音声を使って会話します。体が大きく、戦闘能力や行動力も高い一方で、表情やしぐさには愛嬌があります。緊張感の強い逃亡劇の中で、ドラムが登場すると少し空気が和らぐ。しかし、単なる癒やし担当ではなく、野崎たちを何度も助ける非常に頼もしい存在でもあります。
言葉をほとんど発しないからこそ、顔の表情や動きだけで気持ちを伝えなければなりません。それでも、ドラムが何を感じているのかが自然と伝わってくるところに、キャラクターとしての魅力がありました。かわいらしさと頼もしさを同時に持ち、登場するだけで印象に残る。壮大で重厚な作品の中に、ドラムのような親しみやすい人物がいることで、物語に見やすさと温かさが加わっていたと思います。
バルサラハガバ・バトボルドさんが演じるチンギスも、非常に印象に残った人物です。序盤では乃木たちを執拗に追いかけるバルカ警察の警察官として登場し、初めは主人公たちの前に立ちはだかる恐ろしい追跡者という印象でした。しかし物語が進むにつれて、チンギスは単純な悪人ではなく、自分の職務に忠実で、正義感の強い人物であることが分かってきます。立場が違うだけで、彼もまた事件の真相を追っている。そのことが分かると、序盤の追跡にも違った見え方が生まれます。
敵だと思っていた人物の印象が変わっていくところは、「敵か味方か、味方か敵か」という『VIVANT』のテーマにも合っています。迫力のある見た目と高い捜査能力を持ちながら、どこか憎めない人間味もある。序盤の追跡者から、次第に頼もしい存在へと変わっていく。その変化も含めて、チンギスは特に好きな人物の一人です。
この3人に共通しているのは、主役ではなくても、それぞれの役割と個性が明確だったことです。黒須は信頼と疑念の間で揺れる相棒。ドラムは頼もしさと愛嬌で緊張した物語を支える人物。チンギスは敵として登場しながら、立場が分かることで印象が変わる人物。登場すると作品の空気が変わり、その人物にしか生み出せない面白さがありました。主役級の俳優だけでなく、脇を固める登場人物にも「この人をもっと見たい」と思わせる力があったことが、作品全体の面白さにつながっていたと思います。
■敵側にも、彼らなりの正義がある
『VIVANT』が単なる勧善懲悪の物語ではないところも、私が好きな理由の一つです。
物語に登場する国際テロ組織・テントは、当然ながら犯罪やテロに関わっています。その行為自体を正当化することはできません。しかし物語が進むにつれて、テントが単純に世界を破壊しようとする悪の組織ではないことが分かってきます。彼らは孤児や社会から見捨てられた人々を救い、守るために活動している一面も持っています。
組織を率いるノゴーン・ベキも、単なる冷酷な悪役ではありません。役所広司さんの重厚な演技もあり、犯罪組織の指導者でありながら、一人の父親、孤児たちを守る存在としての温かさも感じさせます。もちろん、正しい目的があれば、どのような手段を使ってもよいわけではありません。それでも、敵側にも彼らなりの事情と正義を描いたことで、物語に深みが生まれています。
「敵か味方か、味方か敵か」。この作品を象徴する言葉は、単に誰が裏切るのかを表したものではないと思います。何が正義で、何が悪なのか。どの立場から物語を見るかによって、その答えが変わるという作品全体の構造を表しているように感じました。
■本当に描かれているのは、父と息子の物語
『VIVANT』は、表面的には国際テロ組織と別班、公安が対立する諜報ドラマです。しかし物語の中心にあるのは、国家によって人生を翻弄された父と息子の物語だと思います。
父は国家に裏切られ、すべてを失った。息子は、その国家を守る側に立った。二人はどちらも高い能力を持ち、組織のために任務を遂行してきました。しかし、その組織や国家によって、大切な家族との時間を奪われています。
国を守る使命を選ぶのか。失った家族を取り戻すのか。乃木がその二つの間で揺れ動く姿によって、物語には派手なアクションだけではない感情的な厚みが生まれています。
後半になるにつれて家族ドラマの要素が強くなるため、国際諜報戦を期待していた人には、少し方向性が変わったように感じられるかもしれません。それでも私は、この変化を長所だと感じました。テロ組織との対立だけで終わるのではなく、その裏にある家族の歴史まで描いたことで、乃木が下す決断にも大きな重みが生まれたからです。
■満点ではなく★4にした理由
とても好きなドラマですが、すべてが完璧だったとは思っていません。
別班の活動、国境を越えた逃亡、銃撃戦、情報収集の方法などには、現実的に考えると少し無理を感じる場面があります。偶然が重なったり、後になって「実はこういう作戦だった」と説明されたりする展開も少なくありません。視聴者に与えられた情報だけで謎を解いていく、厳密なミステリーとして見ると、強引に感じる部分もあると思います。また、序盤では重要な役割を持っていた人物が、後半になるにつれて物語の中心から外れていく点も少し惜しく感じました。
それでも、そうした弱点を補って余りある魅力がありました。壮大な海外ロケ、豪華な俳優陣の演技、先の読めないストーリー、毎話の終盤に用意された驚き。そして、多少強引でも視聴者を最後まで引っ張っていく圧倒的な勢い。細かな部分を検証しながら見るというより、「次に何が起きるのか」とワクワクしながら楽しむ大型エンターテインメントとして、非常に満足度の高い作品でした。完璧ではないからこそ満点ではありません。しかし、多少の無理を気にさせないほどの熱量と面白さがあったため、私の評価は★4です。
■こんな人におすすめ
- 壮大なスケールの作品が好きな人
- 先の読めない展開を楽しみたい人
- 豪華俳優陣の演技を堪能したい人
- 魅力的な脇役が活躍する作品が好きな人
- 毎週、考察しながらドラマを見る楽しさを味わいたい人
逆に、細部の整合性をきっちり詰めたい人や、一つのジャンルに腰を据えた物語を求める人には、少し忙しなく感じられるかもしれません。
第2シーズンの第1話については、こちらの記事に書いています。
同じく日本発の重厚な大型ドラマとして、ドラマ『ガンニバル』のレビューもあわせてどうぞ。こちらも続きが気になって止まらなくなる作品です。
■まとめ
★★★★☆(5点満点中4点)
『VIVANT』は、すべてが緻密に整った完璧なドラマではありません。現実離れした展開や、少し強引に感じる仕掛けもあります。しかし、日本の連続ドラマでここまで大きなスケールの作品を作り、豪華な俳優陣と予測不能な物語によって、毎週多くの視聴者を引きつけたことには大きな価値があると思います。
主役級の俳優だけではなく、黒須、ドラム、チンギスのような人物が強く印象に残ったことも、この作品のキャラクターの魅力を表しています。乃木を信頼しながらも翻弄される黒須。愛嬌と頼もしさをあわせ持つドラム。敵として登場しながら、次第に見え方が変わっていくチンギス。それぞれが物語に違った面白さを与えていました。
誰かにおすすめするときには、物語の核心には触れず、こう伝えたいです。まずは第4話まで見てほしい。第4話を境に、乃木という主人公も、それまで見ていたドラマの印象も大きく変わるから、と。第1話から海外ロケの迫力を楽しめますが、第4話まで見ることで、初めて『VIVANT』という作品の本当の姿が見えてきます。
そして2026年7月26日から、いよいよ第2シーズンが始まります。第1シーズンをリアルタイムで追いかけた者として、再び毎週『VIVANT』を追い、放送が終わるたびに次の展開を考えられることが、今からとても楽しみです。私が特に好きな黒須、ドラム、チンギスが、第2シーズンでどんな活躍を見せてくれるのかも期待しています。
第1シーズンは、2026年7月現在、U-NEXT・Netflix・Lemino・Amazonプライム・ビデオで見放題配信中です。第2シーズンが始まる前に、ぜひ一度観てみてください。
月額600円(税込)
※配信状況は変更される場合があります。
※本ページの情報は2026年8月時点のものです。最新の配信状況は各公式サイトにてご確認ください。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

