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『コヴェナント 約束の救出』レビュー|ガイ・リッチー監督が描く、果たされなかった約束の物語

夕日の荒野を並んで歩く米兵とアフガン人男性のシルエット 洋画レビュー
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NetflixとAmazonプライム・ビデオで配信中の映画『コヴェナント 約束の救出』を観ました。ガイ・リッチー監督、ジェイク・ジレンホール主演の戦争ドラマです。

普段のガイ・リッチー作品とはまったく毛色の違う、重く、そして胸に深く残る一本でした。観終わったあともずっと、登場人物たちの「約束」について考えてしまう。そんな作品だったので、感想を書いておきます。

※この記事は、物語の結末を含むネタバレに触れています。まだ観ていない方で、事前情報なしで楽しみたい方はご注意ください。本作は予備知識なしで観るのがおすすめという声も多い作品です。

■作品概要

『コヴェナント 約束の救出』は、2023年制作のアメリカ・スペイン・イギリス合作のアクション・スリラー映画です。原題は「Guy Ritchie’s The Covenant」。日本では2024年に公開されました。

監督・共同脚本・共同製作を務めたのは、『スナッチ』『ジェントルメン』などで知られるガイ・リッチー。主演はジェイク・ジレンホール、そして通訳アーメッドを演じるのはダール・サリムです。

『スナッチ』のようなスタイリッシュでユーモアあふれる犯罪映画を得意としてきたガイ・リッチーにとって、本格的な戦争ものは異色の挑戦でした。実際に観てみると、いつもの軽快なノリは抑えられていて、硬派で緊張感のある作りになっています。

配信は、NetflixとAmazonプライム・ビデオの両方で観られます。

■あらすじ

舞台は2018年のアフガニスタン。米軍を率いるジョン・キンリー曹長は、タリバンが隠した武器や爆弾を探す任務にあたっていました。

彼はアメリカへのビザを報酬に、アフガン人通訳のアーメッドを雇います。現地の言葉や文化を知る通訳は、任務に欠かせない存在でした。

しかし、ある日の任務でタリバンの大部隊に襲われ、部隊は壊滅。生き残ったキンリーとアーメッドの、過酷な逃避行が始まります。

■前半:信頼していなかった通訳が、命がけで自分を救う

この映画は、大きく前半と後半に分かれています。前半は、負傷したキンリーを、通訳のアーメッドが救おうとする物語です。

最初、キンリーはアーメッドを完全には信頼していませんでした。それも当然で、現地の通訳が本当にアメリカに協力してくれるのか、協力したところでタリバンに何をされるか分からない。そんな緊張感が、序盤からしっかり伝わってきます。何人かの通訳候補に基本的な軍事訓練を受けさせたうえで、軍の担当者から薦められたのがアーメッドでした。

ところが、このアーメッドが只者ではありません。通訳でありながら銃の腕前もなかなかで、何より、負傷して動けないキンリーを、遠く離れた軍の基地まで運ぼうと、文字通り命がけで奮闘します。

タリバンに追われながら車で移動し、時には現地の人になりすまして(そもそも現地の人なのですが)、検問を巧みにかわしていく。途中、タリバン嫌いの同胞から食料と、痛み止め用のアヘンを手に入れ、その代償として車を譲る。車を手放したあとは、手押し車にキンリーを乗せ、懸賞金をかけられながら、上り坂を汗だくで押していきます。

普通なら、ここまでするか、と思わずにいられない執念でした。

そしてある場所で、食料を買いに来たタリバンに手押し車のキンリーを見つかってしまいます。しかしアーメッドは、素早く彼らを倒し、間一髪のところでアメリカ軍に救出されます。このときキンリーは意識を失っていて、自分がどう助けられたのかを、はっきりとは覚えていませんでした。

アーメッドは英雄として扱われ、キンリーも無事にアメリカの家族のもとへ帰ることができました。

■後半:救われた者の、終わらない罪悪感

しかし、物語はここで終わりません。むしろ、本当のテーマは後半にあります。

キンリーを救ったことで、アーメッドはタリバンの深い恨みを買い、懸賞金までかけられてしまいます。約束されていたはずのアメリカへのビザはなかなか発行されず、アーメッドは家族とともに、身を隠して逃げ続ける生活を強いられていました。

一方のキンリーは、アメリカの自宅で、家族とともに穏やかに暮らしています。ですが、その心はまったく休まりません。

自分はベッドで眠り、家族とキスを交わすことができる。それなのに、自分を救ってくれたアーメッドは、今もどこかで隠れて生きている。「自分が残るべきだったのではないか」——そんな葛藤に、キンリーは苛まれ続けます。

追い打ちをかけるのが、フラッシュバックです。意識を失っていて覚えていなかった「自分がどう救われたのか」が、ある瞬間、鮮明に蘇る。アーメッドが懸命に自分を介護し、運んでくれた、あの過酷な道のりです。

その記憶を思い出したことで、アーメッドへの想いはかえって強くなり、キンリーの心はますます休まらなくなっていきます。

ここが、この映画の心臓部だと感じました。前半のアーメッドの執念と、後半のキンリーの罪悪感が、このフラッシュバックを境にひとつにつながるのです。

■「約束」とは何だったのか

タイトルの「コヴェナント」は、「約束」「誓約」という意味です。

この約束とは、単にキンリー個人がアーメッドに対してした約束ではありません。協力してくれた通訳には、不自由のない生活と、アメリカへのビザを与える——アメリカが交わしたはずのその約束が、果たされていない。キンリーがずっと気にしていたのは、まさにそこでした。

命を救われた恩義はもちろんあります。けれどそれ以上に、果たされるべき約束を、せめて自分の手で果たすこと。それがキンリーを突き動かしていた一番の理由なのだと思います。

個人の恩返しを超えて、「国が破った約束を、自分が果たす」。そう考えると、この物語の重みがぐっと増してきます。

■キンリーの覚悟が決まる、大佐との対決

アーメッドを助けに行こうにも、現地へ入るためのビザがなかなか取れません。キンリーは何日も電話をかけ続けますが、保留にされたりとうまくいかず、苛立ちが募っていきます。最後にはものに当たって倒れ込んでしまうほど。先ほど触れたフラッシュバックは、まさにこの追い詰められた瞬間に蘇ります。

そんなキンリーを支えたのが、奥さんの決断でした。家を担保にしてアーメッドのためのビザを工面し、命の恩人を救っておいでと夫を送り出すのです。

このとき、奥さんの心情がまた切ない。本当は送り出したくない気持ちもあったはずです。夫はこの一件で何週間も落ち込み、救われないとさえ思っていた。母親として家庭を守る責任もある。それでも、夫の命を救ってくれた恩人だから——。そんな葛藤を抱えながら、彼女は背中を押すのです。

そして、キンリーが大佐に直談判するシーン。電話口での暴言を録音で突きつけられても、彼はまったく引きません。通常の手続きを踏めばいいという正論に対して、自分の心には目に見えない鉤が引っかかっているのだと訴える。かつて自分が大佐の命を救った貸しまで持ち出して、ビザの取得を頼み込みます。

目に見えないが、確かにそこにある鉤。この比喩が、キンリーの抱える罪悪感そのものを言い表していて、とても印象に残りました。

■結末:ヘリの中で交わされた、約束の果て

現地に入ったキンリーは、パーカーという男を頼ります。大金を払って救出チームを用意してもらう予定でしたが、準備に時間がかかると言われ、待ちきれずに単独で動き出します。

アーメッドの弟と接触し、状況を聞くキンリー。弟の口からは、兄が今どれほど危険な状況にあるか、懸賞金がどれだけ吊り上がっているかが語られます。それでもキンリーは、命の恩人を国外へ逃すという決意を曲げません。

救出に向かう道中、大佐からキンリーへ一本の電話が入ります。アーメッドの家族全員のビザが取れた、という報せでした。あの直談判が、ついに実を結んだ瞬間です。キンリーの安堵が、こちらにも伝わってきました。

そして、アーメッドと家族の救出に成功します。ラスト、ヘリの中で、キンリーとアーメッドが向き合います。アーメッドは、ようやく認められた証であるビザとパスポートを手に取り、キンリーに小さく頷く。キンリーはそれを少し見上げるようにして、やっと約束を果たせたという安堵の表情を浮かべるのです。

言葉は多くありません。それでも、ふたりの間に流れる感情のすべてが、この静かな一瞬に込められていました。

そして幕切れに、字幕が映し出されます。300人以上の通訳とその家族が殺され、今も数千人が身を隠している——という事実です。

この字幕によって、映画の中で果たされた約束の裏側に、果たされなかった無数の約束という現実があることを、観客は突きつけられます。フィクションの感動の余韻のまま終わらせない、この終わり方に、作品の誠実さを感じました。

■こんな人におすすめ

・『ブラックホーク・ダウン』のような、緊迫感のある戦争ドラマが好きな人

・派手なアクションよりも、人と人の絆や葛藤を描いた物語が好きな人

・ジェイク・ジレンホールの、内面を抱えた演技を観たい人

・ガイ・リッチー監督の新たな一面を観てみたい人

いつものガイ・リッチーらしい軽快さやスタイリッシュさを期待すると、少し驚くかもしれません。でも、それを差し引いても、ずっしりと心に残る作品です。

■まとめ

私の評価は ★★★★☆(5点満点中4点) です。

『コヴェナント 約束の救出』は、命がけで自分を救ってくれた人への恩義と、果たされなかった約束をめぐる、重く誠実な物語でした。

前半はアーメッドの執念の救出劇、後半はキンリーの終わらない罪悪感。立場が逆転していくこの構造と、「約束を果たす」というテーマ、そして現実を突きつけるラストの字幕が、観終わったあともずっと胸に残ります。

NetflixとAmazonプライム・ビデオの両方で配信中です。静かに、しかし確かに心を揺さぶられたい人に、ぜひ観てほしい一本です。

Amazon Prime Video

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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