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映画『侍タイムスリッパー』レビュー|斬られ役として生きる侍の、時を超えた決着

時代劇撮影所で青い稲妻に包まれ刀を構える侍のシルエット。映画侍タイムスリッパーのイメージ 邦画レビュー
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Amazonプライム・ビデオで配信中の映画『侍タイムスリッパー』(2024)を観ました。

幕末の侍が現代の時代劇撮影所にタイムスリップし、「斬られ役」として第二の人生を歩んでいく時代劇コメディです。

たった1館の上映から口コミで全国へ広がり、日本アカデミー賞最優秀作品賞まで獲った——という背景もあって、期待して観てみました。

※物語の核心(クライマックス)には触れずに書いていますが、一部の展開には触れています。ネタバレを完全に避けたい方はご注意ください。

■作品概要

2024年公開の日本映画。監督・脚本・撮影・編集を安田淳一さんが一人で担当した、自主制作の時代劇コメディです。

主演は山口馬木也さん。共演に冨家ノリマサさん、沙倉ゆうのさんなど、時代劇を支えてきた俳優陣が集まっています。

上映時間は131分。
もともとは池袋シネマ・ロサ1館だけの上映でしたが、SNSでの口コミから全国公開へと拡大し、第48回日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞した話題作です。

2025年3月21日からAmazonプライム・ビデオで見放題配信が始まりました。
(このほかDMM TVやHuluでも見放題、U-NEXTなどでレンタル配信されています。Netflixでは配信されていません)

■あらすじ

幕末の京都。会津藩士・高坂新左衛門は、長州藩士を討つ密命を受けていました。

相手と刃を交えたその瞬間、雷が落ちる。
気を失った新左衛門が目を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所でした。

江戸幕府がとうの昔に滅んだことを知り、一度は死を覚悟する新左衛門。
しかし心優しい人々に助けられ、やがて「斬られ役」として生きていく道を選びます——。

■侍が「斬られ役」になるという設定

この映画の面白さは、なんといっても侍が現代で「斬られ役」に立候補するという設定にあります。

本物の侍が、現代社会に馴染もうとして、わざわざ斬られる役を一生懸命やる。
そこがある意味すごいなと感じました。

正直なところ、誇り高い侍が「斬られる」のを受け入れるというのが、実際にあり得るのかどうかは少し疑問にも思いました。

それでも、新左衛門は殺陣を一から学び、努力を重ねていきます。
そして斬られ役から、やがて準主役級の役までもらえるようになる。頑張っていれば報われるという流れが、しっかり描かれていました。

■現代の豊かさに泣く侍

個人的に印象に残ったのは、新左衛門が現代の暮らしに戸惑う場面です。

テレビをつけて、画面の中で絵が動いていることに驚く。
出されたケーキを見て「これは高級な菓子なのか、誰でも食べられるのか」と問う。

それが、どこでも売っている普通のお菓子で、誰でも食べられるものだと知ったとき——新左衛門は、この日本がこんなにも豊かになったのかと涙を流すのです。

幕末を生きた侍だからこそ、今の平和や豊かさが胸に沁みる。
このシーンに、作品が伝えたいものが詰まっているように感じました。

新左衛門を支えるのは、撮影によく使われるお寺(西経寺)の住職夫妻と、映画監督を目指す助監督の山本優子さん。
新左衛門が優子さんに淡い想いを寄せている様子も、物語にやわらかい温度を加えていました。

■時を超えた、二人の侍

物語が大きく動くのは、新左衛門が時代劇のトップスター・風見恭一郎の新作で、準主役に抜擢されるところからです。

この風見こそ、新左衛門がタイムスリップする直前に斬り合った、あの長州藩士・山形彦九郎その人でした。
彼は新左衛門より30年も前に現代へタイムスリップしており、同じように斬られ役から俳優へと這い上がっていたのです。

かつて命を懸けて斬り合った二人が、今度は「本物の侍の姿を現代に残したい」という想いで手を組む。
時代劇という形で、自分たちが生きた侍の生き様を残そうと奮闘していく流れには、グッとくるものがありました。

そして迎える終盤の対決シーン。
よりリアルな演技を求め、二人は本物の刀=真剣を用いて撮影に臨みます。

真剣だけに、真剣に(笑)。
でも、その緊張感の先にあったのは、あの幕末の夜に決着のつかなかった斬り合いの、続きでもあったように思います。

撮影後、二人が交わす言葉が静かに胸に残ります。
今という時代を精一杯生きること。あの頃の自分たちの想いも、時代劇も、いつかは忘れ去られる日が来るかもしれない。だが、その日は今日ではない——そんなニュアンスのやりとりだったと記憶しています。

■正直に感じたこと

面白かった一方で、正直に書くと、テンポは少し長く感じる部分もありました。

この展開や間合いを「いい」と感じるかどうかは、人によって少し分かれるかもしれません。

それでも、伝えたいことはしっかり伝わってきましたし、侍の生き様もきちんと描かれていて、観てよかったと思える一本でした。

■こんな人におすすめ

  • 時代劇やチャンバラ(殺陣)が好きな人
  • 努力が報われる、まっすぐな物語が観たい人
  • 自主制作からの大ヒット作という背景に興味がある人
  • 笑いと人情、少しの感動をバランスよく味わいたい人

テンポの良いスピーディーな展開を求める人には少し合わないかもしれませんが、じっくり物語に浸れる人にはおすすめです。

■まとめ

私の評価は★★★★☆(5点満点中4点)です。

侍が現代の豊かさに涙し、斬られ役として努力を重ね、やがてかつての宿敵と「侍の生き様を残す」ために手を組む。
その芯にあるテーマが、観終わってしっかり伝わってきました。

テンポの長さなど、少し人を選ぶ部分はあります。
それでも、侍の生き様が丁寧に描かれていて、面白かったと素直に思える作品でした。

Amazonプライム・ビデオで配信中なので、気になった方はぜひチェックしてみてください。

AmazonPrimeVideo

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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